幕末 本と写真

蔵書紹介系 幕末維新探究ブログ

古書

元京都見廻組・中川四明の書いた龍馬暗殺

明治時代の京都の代表的俳人だった中川四明。本名は重麗。別号は紫明・霞城。東大予備門教授、京都日の出新聞編集を経て大阪朝日新聞に勤めた。正岡子規と親交があり、満月会を興し新派俳句興隆を促した。 その四明は嘉永2年に京都町奉行与力下田耕助の次男…

金玉チン右衛門こと大久保一蔵

『維新長崎』は長崎市教育會から昭和16年に出た本。維新期の長崎を平易な文体で描いている。平山蘆江が装幀しており雰囲気のあるルックになっている。 さて、その本の中に大久保利通に関する面白い話が出てくる。大久保は自らを男性の陰部に擬えた名前「金玉…

『元治甲子 禁門事變實歴談 附木戸氏之行動』

【元治甲子 禁門事變實歴談 附木戸氏之行動 洋一冊 馬屋原二郎演述 元治元年禁門事變の實況を、當時の戦闘に參加して、九死に一生を得たる後の貴族院議員馬屋原二郎(小倉衞門介)が、自己の見聞並に木戸孝允の手記書翰共他先輩諸士の談話實録等に據りて、演述…

原市之進『尚不愧齋存稿』

原市之進の遺稿集『尚不愧齋存稿』。 この本については高梨光司の解説(『維新史籍解題』)が簡潔にして明瞭なので引用させてもらおう。 【『尚不愧齋存稿』和四冊 線引泰編 水戸藩士にして、徳川慶喜の左右に侍し、その帷幄の概機に參せる原市之進(名忠敬、後…

『推轂集』

牧頼元は庄内藩士牧半右衛門の長男として弘化元年鶴岡に生まれた。到道館に学ぶ。明治8年に新潟師範学校に入学。卒業後は庄内の小学校訓導・校長に奉職。晩年は東京に出て日下部鳴鶴、芳賀剛太郎らと風交を結ぶ。書家として名があった。明治44年4月30日、68…

酒井玄蕃研究誌『冬青』について

酒井玄蕃研究家の坂本守正は『酒井玄蕃の明治』稿了後すぐ、玄蕃の戊辰までの前半生の研究に着手する。そして昭和57年玄蕃の伝記研究のための会員制の個人誌『冬青』を創刊する。玄蕃自筆文書の解読を誌上に連載して読者の批判訂正を乞うとともに、新史料の…

『酒井玄蕃の明治』坂本守正の著作

幕末維新の庄内藩および酒井玄蕃の研究家だった坂本守正。その著作で私が持っているのは『酒井玄蕃の明治』『戊辰東北戦争』『出羽松山藩の戊辰戦争』『七星旗の征くところ−庄内藩戊辰の役−』の4冊である。この中でもっとも一般的なのは『戊辰東北戦争』(新…

安藤惟親『切山椒 九十三年の思い出』

安藤惟親『切山椒 九十三年の思い出』(萬葉堂出版、昭和58年)荘内館は本郷元町にあった荘内出身者のための東京の学生寮であった。 安藤惟親は明治43年に荘内中学を卒業すると上京、東京高等工業学校に学んだ。荘内館に寄宿した。 この人はスペンサー銃で装…

ぐろりあ・そさえて版でいこう!アメリカ彦蔵

『開国逸史 アメリカ彦蔵自叙伝』(ぐろりあ・そさえて社、昭和7年) アメリカ彦蔵の自叙伝は最初英文で書かれ『 Narrative』(ナラティブ)と題され丸善から明治25〜28年に上下2巻で出版された。邦訳は、先ずは上巻の方を土方久徴が訳して『漂流異譚開国之…

岩瀬忠震に関する本

岩瀬忠震には中公新書の松岡英夫『岩瀬忠震』(昭和56年)の他に単書のしっかりした伝記が編まれていない。白鬚神社にある岩瀬鷗處君之墓碑は岩瀬の顕彰碑になっているが、開国の恩人にして幕臣中屈指の才子に相応しい紙碑(伝記本)が新たに編まれることを…

鵜殿鳩翁の「浪士姓名簿」

東京は上野に明治10年から続く老舗古書店 文行堂の戦前昭和13年9月発行の目録第17号に「浪士姓名簿」が出品され当時35円で売られた。(ちなみに同目録に高橋是清の自筆演説草稿も載るがそちらは30円。公務員の初任給は75円くらいだったそうだ) 目録には背開…

慶応元年6月、岡崎に来た新選組隊士たち

遠州浜松にあった普大寺は江戸時代、虚無僧寺で普化宗金先派の本山として1613年に宗慶禅師により浜松に創建された。しかし明治に入り普化宗の廃宗に伴い廃寺となった。 廃寺となった寺の本堂は小学校として利用された。たまたま音楽の授業で使われていたアメ…

西郷隆盛の肖像

再来年の大河ドラマが西郷隆盛に内定したということを知った。 まだ先のことなのでだいぶ気が早いかもしれないが、しばらくしたら大河ドラマ需要で洪水のように西郷隆盛に関する書籍が出版されるだろう。 その出版ラッシュの際には、ぜひ再版してほしい本が…

鶴ヶ城のエッチング

明治5年、外国人の自由な国内旅行が許されていなかったときに、一人のフランス人神父が二人のスイス人と一緒に新政府の許可を得て、函館から東北地方を縦断し横浜まで旅をした。パリ外国宣教会所属のJ.M.マラン神父である。同行のスイス人は横浜で貿易商を営…

勝海舟写真についての新聞記事

以前古本屋で買った楫東正彦『海舟言行録』(光融社、明治40)という本に新聞の切り抜きが貼り付けてあるのに気が付いた。裏面は「ローマ五輪日本はどこまでやれるか」という記事になっているので、その時代(1960年くらい)の新聞記事なのだろう。 石黒コレクシ…

子母澤寛の祖父は幕臣だったのだろうか?

子母澤寛の祖父というのは微禄の御家人であり、上野彰義隊に参加し、敗れたのち箱館でも戦い降伏。士籍を返還して札幌近郊の開墾を経て厚田村に流れ着いて網元や貸座敷業や旅館業を営み、土地の顔役として生涯を終えたという。 この祖父に盲愛にも似た可愛い…

石黒敬七『蚤の市』『巴里雀』

私は古写真をぽつぽつ蒐めている。その貧弱なコレクションを開陳するのは恥ずかしくて大いに躊躇われるのだが、それでも勇気を振り絞ってこのウェブログでも所有する古写真を紹介することもある。 古写真コレクターの大先達、巨星たる石黒敬七。その万分の一…

『小伝乙骨家の歴史』『明治の兄弟』

ブックオフで購った古本2冊。 永井菊枝『小伝乙骨家の歴史 ー江戸から明治へ』(フィリア、2006) 右の本は幕臣・乙骨家について。甲府徽典館学頭の乙骨耐軒から、その子で幕末の英学者乙骨太郎乙、さらにその子で童謡「はとぽっぽ」「汽車」「浦島太郎」の…

福永恭助『 海将荒井郁之助』

以前購った古本を3冊紹介してみます。 まずは真ん中。 福永恭助『 海将荒井郁之助』(森北書店、昭和18) この伝記は書き手に人を得なかったようであくまで読み物風。通俗小説的な文体の上に事実関係にアラが目立つ。福永はモダニズム雑誌『新青年』に寄稿し…

孝明天皇の等身大人形

前回の投稿に続いて『五十年の夢 柳昇遺稿』(非売品、大正8年)からまた幕末の等身大人形に関する逸聞を。 孝明天皇が自身の等身大人形を作らせると、その人形の「業」にて俄かに病気になり、ついには崩御あらせられたいう噂。人形霊の話。 「十二月に入りて…

ダッチワイフと徳川慶喜

幕末に朝廷の図書寮史生だった舟木宗治(号柳昇)はあまりに小禄だったため副業として宮中、宮家、門跡、堂上方に出入りして御手道具、袋物、小間物、玩弄具などを調達することも生業もしていた。舟木は生来の記録魔でもあったためその立場を活かして自らの…

箱館戦争の史料覆刻本

市立函館図書館蔵郷土資料複製叢書という函館市立図書館発行の函館の郷土資料の叢書がある。 その内の27巻『一年乃夢/蝦夷土産』、28巻『峠下ヨリ戦争之記』、31巻『麦叢録』は箱館戦争に関わる史料の覆刻本になっている。 この叢書には他にどんな書目があ…

『幕末之偉人江川坦庵』

矢田七太郎『幕末之偉人江川坦庵』(國光社、明治三十五年) 以前江川太郎左衛門英龍の古い伝記を古本屋で1700円で購った。 安く手に入ってのでラッキーだと思ったのだが、驚いたことにその本の旧蔵者は庄内藩出身の俣野景孝だったようだ。とびらの裏に書き…

『兄中原中也と祖先たち』

中原助之 中原中也の弟の中原思郎には『兄中原中也と祖先たち』(審美社、1970)という 著作があって、かの天才詩人の貴重な回想と生い立ちに関する資料を提供する一冊となっている。しかし、私のようなものにとっては、この本は 防長維新史に関連する本として…

山内六三郎

色黒の山内六三郎。 内藤遂『遣魯伝習生始末』(東洋堂、昭和18年)より。 パリや箱館で撮られた山内六三郎の肖像写真を見ると白皙のモダンボーイという感じなのだが、この写真のはすごくワイルドな男に写っている。 当時の写真は黄色に感光し易いので、日本人…

子母澤寛『新選組始末記』『新選組遺聞』

子母澤寛『新選組始末記』(萬理閣書房、昭和3年)この本は荻窪のささま書店で1000円で買ったっけ。でも函がない…。パンツを穿いてないようで落ち着かない…。子母澤寛『新選組遺聞 』(万里閣書房、昭和4年)装丁はこんな感じだったんです。大津絵風?の鬼、ど…

『佐々木只三郎伝』

高橋一雄編『佐々木只三郎伝』(史傳研究所、昭和13年)ずいぶん昔に書架に差すことができた本だ。稀覯本といっていいだろうか。この本は国会図書館にも所蔵が無い。会津若松市立図書館に禁帯出で所蔵されていたり、あと霊山歴史館にもあるくらいのようだ。

平尾道雄『新撰組史』『新撰組史録』

平尾道雄の新撰組研究の古典的名著のいろんな版を持っていたりする。左から 『新撰組史』(私家版、昭和3年) 『新撰組史録』(育英書院、昭和17年) 『新撰組史録 改装版』(岬書房、昭和48年) 『定本新撰組史録』(新人物往来社、昭和52年) 『定本新撰組…

『北洲新話』

箱館戦争の戦記として評価が高い『北洲新話』は元彰義隊士丸毛利恒が幽囚中に綴ったもの。 雑誌『旧幕府』に「函館戦史」として改題連載されて世に出たが、そこでは惜しくも貴重な挿絵は割愛されている。昭和15年に海軍有終会が非売品として発行した『北洲新…

『名流談海』

明治32年に博文館から出版された大橋乙羽の『名流談海』は当時の名流の談話を「其の儘写して世に廣むる」という談話集。 勝海舟や伊藤博文、山県有朋、大隈重信、福地桜痴、栗本鋤雲などが談話を寄せている。袖珍本ながら興味深い一冊だ。 口絵に載せている…