幕末 本と写真

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南洲、海舟談判の史蹟

『都下に於ける史蹟並天然記念物一班』(内務省地方局編纂部、明治44年)という本から。
この土蔵の写真は諸書で見ることが出来るが、その初出はこの本かもしれない。

「南洲、海舟談判の史蹟(芝区田町)
芝薩摩原の電車分岐点に旧式の土蔵一棟あり、前に警官の交番所あり。この土蔵今は南部子爵別邸内なれども、明治以前は鹿児島藩の下屋敷なりき。戊辰の当時上屋敷即ち本邸は焼けし後なれば、便宜上西郷、勝の両氏は此の別邸を選びしなり。慶応四、即ち明治元戊辰三月十三日十四日の帰順の談判は茲に開かれたるなり。江戸の町人、東京の市民も感謝す可きは当日の談判に由り徳川氏が恭順の誠意も天朝に聴え、官軍の炮火を免れ江戸の安全を保ち得たることなり。此の下屋敷の建築物は此の土蔵の外は改築せられ又は破却され、表門書院等の跡も今は二三の雑木ある空地となりて存す。」