幕末 本と写真

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『幕末之偉人江川坦庵』

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矢田七太郎『幕末之偉人江川坦庵』(國光社、明治三十五年) 

 

以前江川太郎左衛門英龍の古い伝記を古本屋で1700円で購った。

 

安く手に入ってのでラッキーだと思ったのだが、驚いたことにその本の旧蔵者は庄内藩出身の俣野景孝だったようだ。とびらの裏に書き込みがある。これは更に嬉しい。

 

俣野景孝は警視庁、大阪府警をへて第一回の衆議院選挙に立候補、当選している。議員ののち実業家に転じた。史談会速記録で清河八郎の暗殺のあらましを語った俣野時中の兄と言った方が幕末好きには分かりやすいだろうか。ちなみに薩摩藩邸焼き討ちの時の庄内藩の参謀だった俣野景明は本家の方の俣野家の人だ。

 

書き込みには叔父の犬塚貞固に取材した江川塾の砲術門人名が8人だけ記されている。

 

最初に書かれている犬塚泉士は庄内藩士で戊辰戦争清川口の戦いに大砲隊を指揮した人物。江川塾では慶応3年に免許を受けて学頭を勤めた人。

 

次に薩摩藩西郷従道、黒田了介の名前があるが、西郷従道は江川塾生だったことなんてあったのだろうか。大山弥助と間違ったのかもしれない

 

その後に記される人物も上田傳次兵衛(慶応3年に学頭)、中村伊兵衛、朝比奈小藤太、吉川清兵衛(慶応3年に世話役)の名前を江川塾の「御塾簿」で確認できた。いずれも庄内藩士。川内某は不明だがおそらく庄内藩士だろう。