2016-12-12 箕作麟祥 幕末のイケメン 『露伴全集』第5巻(岩波書房、1951年)に「幕末の政治家」が収められている。幸田露伴が明治30年に発表したもの。焚くとその煙の中に死んだ者の姿が現れるという伝説上のお香・反魂香を用いるという体で幕末の大名や幕臣の容姿、人となりを紹介する興味深い一編である。 〈「小説材料帳」といへる秘密の経を心誦しつつ、そぞろに幕末の人々が上をおもひて、観得たるおもむきを語らんかな。〉 露伴の父親である幸田成延は奥御坊主衆として、江戸城に勤務して、大名や幕臣と身近に接していた幕臣であるため、露伴はその父の回想を主要な材料としてこの一編を書いたものと推定される。 この幕末の幕閣、幕臣らのポートレートの中なら、今回は短めの箕作麟祥と勝海舟の姿を抜き出してみよう。 箕作麟祥、勝麟太郎の同じ麟のつく者同士(二麟)が当時極めて異相ともいえる総髪姿であったことが語られている。 〈二麟 衣服の異様なる人よりも少きは惣髪の人なり。翻訳方の箕作麟祥と軍艦奉行の勝麟太郎と、揃ひも揃ひて麟の字の付きたる人のみ同じく惣髪なりしは不思議に思はれぬ。〉 この二麟、お互いに目がぱっちり大きくて日本人離れした顔立ちなのもなんとも面白い。