幕末 本と写真

蔵書紹介系 幕末維新探究ブログ

『名流談海』

明治32年に博文館から出版された大橋乙羽の『名流談海』は当時の名流の談話を「其の儘写して世に廣むる」という談話集。
勝海舟伊藤博文山県有朋大隈重信福地桜痴、栗本鋤雲などが談話を寄せている。袖珍本ながら興味深い一冊だ。
口絵に載せている談話者の写真も大橋乙羽がすべて撮影している。

勝海舟晩年のこの写真もその中の一枚。

「氷川の冬枯れは臺町の木立の骨立つて見えるのにも知られて、唯何となく物淋しい或日の午後、弗と海舟老伯をその本邸に訪ふた」

「ナニ写真を撮ると、私の顔を晒ものにするのか、お前も物好な男だな、私は一抵写真は嫌ひで、六七年前に撮つたのがあるから、それを借さう、ナニ態々撮りたいと、風邪が重くなかつたら何うするとの難問には、自分は口が開けなかつた、が、伯爵が寛大なる度量の病床より起つて、庭の一隅に立ち給はつたので、自分は首尾克撮影を了つた、その序でに老夫人をも撮影した」

なんと、ここでは海舟は自分では写真嫌いだと言っている。海舟先生、あんなにたくさんの自分の肖像写真を残しているのに、それはないだろう。