幕末 本と写真

蔵書紹介系 幕末維新探究ブログ

旗本 正木安次郎康房

埼玉県加須市多門寺にある観音寺に、この地を知行していた旗本正木氏の墓がある。

正木氏は家康の側室で紀州・水戸両藩の藩祖の母となったお万の方の弟の家系で一千石の旗本。

幕末期の当主は正木安次郎康房で、長州戦争に砲術世話心得として従軍。その際大阪の心斎橋で写された22歳の肖像写真が残っている。
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幕府瓦解後の正木氏の生活は悲惨で、主家に従い 浜松に移住するが、生活難に陥り明治9年、康房は死去。
路頭に迷った妻春子は9歳の嫡男康道と姑扶佐子、義姉清子を連れて、かつての知行地の名主網野家を頼り、多門寺に移り住んだ。
網野家は旧領主一家の境遇に深い同情を示し暖かい支援をしたようだ。しかし一家は相次いで亡くなってしまう。息子康道を亡くした春子は近隣の農家に再縁し、大正6年に死去。正木家は絶えてしまった。
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写真は14歳で亡くなった康道や、康房の母扶佐子、姉清子の墓石。

康房の肖像写真は春子が亡き夫を偲んで再縁先まで後生大事に持っていったもの。春子は再縁先の墓に葬られている。