幕末 本と写真

蔵書紹介系 幕末維新探究ブログ

蝦夷共和国の面々の写真

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蝦夷共和国」の面々のおなじみの写真の複写である。

戦前の五稜郭で絵葉書代わりのお土産として売られていた写真ではないかと推測している。

榎本武揚の写真がないのは、なぜか榎本だけはサイズ違いの絵葉書大になっているため。そちらもいつか紹介してみたい。

 

複写の元ネタは函館市立中央図書館(昔は市立函館図書館)に所蔵されている写真である。現在では書籍やネットで高精細で見ることのできる写真だ。

十人写真が1枚の半切大のグレーの台紙に貼られたものと、十人がそれぞれ個別の台紙に貼られた10枚の写真との二種類がある。

箱館戦争時に榎本軍の人々を撮影したのは田本研造。その田本の弟子にあたる写真師池田種之助が函館図書館の館長岡田健蔵へ明治44年に寄贈したものになる。グレー台紙の1枚もの方の裏書きにその旨が書かれている。その時点で原写真でない複製物である。目元パッチリ鼻筋がスッと通った人工的なイケメン顔に修整がされている。

今回紹介するのは、その池田種之助寄贈の写真をさらに複写したもの。正直出来ばえはイマイチである。

背景から人物から切り取られていて人物のキワに違和感がある。加えて露出過多で細部が黒く潰れてしまっている。とても質のいい複写とは言えない。

下部に役職名がガリ版文字の書体で焼付られていて、それが全体のチープさを強調している。しかし逆にそれがなんともいえない味わいにもなっている。

出来の悪い複写のために図像から得られる情報量は少ないのが悲しいが、戦前にはこの複写のものが榎本軍の写真として世間に流布している。『幕末・明治・大正 回顧八十年史』(東洋文化協会、昭和8~10年)という本にはこちらのチープ写真の方が掲載されている。