「榎本艦隊をとらえた唯一の写真」とされるものがある。
品川沖脱出直前、慶応四年八月十八日の歴史的な写真だという。
刊本での初出は『別冊歴史読本ビジュアル版 イラストでみる箱館戦争』(新人物往来社、昭和63年)ということになるだろう。巻頭に戸高一成の解説によって紹介された。
写真の来歴もこの本によってわかる。
「この写真は幕臣松尾一化子旧蔵の紙焼きを所持していた造船史の権威・故山高五郎氏から海事評論家の飯盛汪太郎氏が譲り受け、複写したものを、飯盛氏のご厚意により借用しました」
松尾一化子とは松尾矗明こと写真史家の梅本貞雄のことであり、本来この写真は梅本のコレクション品だったわけだ。梅本が幕臣だった訳ではない。おそらく旧幕臣の持ち物を梅本が手に入れたのではないだろうか。慶応四年八月十八日と日時も明らかなのは鶏卵写真の台紙の裏書きにそのように記載があったのだろう。
いずれにしろ、飯盛汪太郎氏の所蔵という写真を確認すれば何事かは明らかになる筈だ。