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『元治甲子 禁門事變實歴談 附木戸氏之行動』

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【元治甲子 禁門事變實歴談 附木戸氏之行動
洋一冊  馬屋原二郎演述

元治元年禁門事變の實況を、當時の戦闘に參加して、九死に一生を得たる後の貴族院議員馬屋原二郎(小倉衞門介)が、自己の見聞並に木戸孝允の手記書翰共他先輩諸士の談話實録等に據りて、演述せるものにして、同事變に關する經緯を説くこと詳細を極め、有力なる維新史料の一たるを失はず。因みに本書は、防長學友會雑誌臨時増刊として、防長學友 よリ、 發刊されたるものなリ。
(大正二年十月 菊判假綴一二四頁)】

上記は高梨光司の解説の引用になる。
(『維新史籍解題』明治書院昭和10年)

本文からも馬屋原の演述の始まりのところを抜き出してみよう。演述の意図がよく分かる。

「此から禁門の事變に於ける私の實歴談と、故木戸孝允(元内閣顧間)の當時に於ける措置進退とに關して私の實見したところを申上る積りでありますが、 何分今を距る五十年も昔のことでありますから、當時京洛の間に活動して、幸に生命を全うすることを得た人々も次第に亡くなりて了ひ、今日では既に殆んど居ないと云つてよい位で、禁門の事變に關係した人々によって組織せられた甲子殉難士祭の如きも、出席者中當時の事變に參加したものは、僅に五指を屈するにも足らず、他は其の子孫若くは縁故者のみであると云ふ有様であります。從つて今のうちに當時の有樣をお話して置くと云ふことは、多少価値のる事であらうと思ふのであります。ことに當時に於ける木戸孝允の行動を知つて居る者は、今日に於ひて恐らく私一人と云つてもよいだろうと信じます。此のことは木戸が自ら當時の事情を語つて杉山孝敏に筆記せしめられたもの、及び近頃、木戸侯爵家に於て發見せられたる故木戸氏の手記に就て御覧になれば、よくお分りになることであります。」